三谷 宏治さん著の『伝わる書き方』をご紹介します。
この本の著者である三谷さんはボストンコンサルティンググループなど外資系コンサルティング会社に勤務されてきた方です。
そんな三谷さんの文章術はコンサルティングの仕事をしていくなかで構築されました。
その文章術で特徴的なのは口語型だということです。では、この口語型とはどのようなものなのでしょうか。
「聴いてわかる書きモノ」にすること
口語型の文章術とは聴いて分かる書き方ということです。まさにプレゼンテーションを多くこなしてきた三谷さんだからこそ考え出された方法でしょう。
文字を読むという行為は実は脳にとって大変な作業です。目で見た情報を図形として認識し、それを文字データと照合して音に変え、そこから単語の意味を確認しています。
文字を読むといっても、結局は脳のなかで音に変え、それを理解しているのです。
ということは、「伝わる」書きモノとは「聴いてわかる」ものなのです。
この「聴いてわかる書きモノ」にするために、この本では大きく次の3つの戦略をあげて、それについて細かく説明されています。
戦略① 短く書く
戦略② 構造化する
戦略③ 波をつくる
ここではこの戦略についてそれぞれ紹介します。
戦略① 短く書く
文章を書く上でこのことは特に重要です。文章が長すぎると、特に主語、述語の関係が分かりづらくなり理解できなくなります。
この本のなかでは長い文章について次のように書かれています。
長い文章は脳のメモ帳である「ワーキングメモリ」を多く占有してしまい、それだけで単語の意味解析などを妨げます。
これを防ぐために次のような方法が書かれています。
- 切り分ける
文章自体を短く簡潔にする。 - ムダを削ぐ
形容詞など余計な装飾を省く。あいまいな表現をさける。 - 表現を平易に
漢字をできるだけ使わない。形容詞を定量化する。
これらのことは分かりやすい文章を書く上では最重要なことです。なるべく文章を短くして、ムダな表現をなくしていくことが大事ですね。
戦略② 構造化する
構造化するとは、書いた文章を小さな塊に整理し、そのうちのどれを結論とするのか定め、その結論を導くために構成をしていくことです。
ここでのコツは次のように書かれています。
ダイジなポイントには必ず数字か実例の論拠を加えることと、結論につながらないものは思いっきり捨てること
そのためにさらに細かく次の3つの方法が説明されています。
- 塊にして結論を選ぶ
似たような内容の文章をひと塊にして、その中から自分が一番言いたい結論を絞りこむ。 - 構造パターンで捨てる・加える
結論に直結しない部分は捨て、足りない部分は加える。数字や具体例を示し論拠を加える。 - アドレッシングする
まず文章の最初に結論か予告を置くようにする。文章の塊同士のつながりを接続詞で分かりやすくする。
この構造化は自分が言いたいことをいかに論拠立てて伝えるかを考えることです。
僕も文章を書くときにはこれらのことに気をつけてはいるのですが、なかなかできていません。そういうことで、ここで説明されている方法はとても参考になります。
特に3のアドレッシングはブログを含めWEBで文章を書く上では大事なことでしょう。
戦略③ 波をつくる
波をつくるとは読者に飽きさせないように、文章の書き方を工夫することです。この戦略はちょっと高度な技です。
次の3つの方法が説明されています。
- 相手の心に合わせる
読み手の「ここ、よくわからないなあ」、「なんでこうなるの?」といった疑問、感情などがわかないような書き方をする。 - 相手の心を動かす
強い事実を示す。意外な比喩を使う。 - 相手の心の逆を取る
期待を裏切った書き方や逆説的表現を使う。
ここでの方法は上級の技なので、実際にできるようになるにはかなり練習が必要でしょう。
でも、この書き方ができるようになると、さらに文章に味がでてくるのでしょうね。
まとめ
この本のなかでは次の3つの戦略をもとに自分が言いたいことを文章できちんと伝える方法を学ぶことができます。
戦略① 短く書く
戦略② 構造化する
戦略③ 波をつくる
特に戦略①、②はいろんな文章に応用できる方法なのでとても参考になります。
この本ではWEB上での文章の書き方に限定して書かれているわけではありませんが、ブログなどWEB上で文章を書く人には学ぶべき点が多いです。
たくさんの事例も紹介されているため、実際にどのように書いたらいいのかが理解しやすくなっています。
文章を書く仕事をしている人だけではなく、なんらかの文章を書く人には一読してほしい一冊です。
『伝わる書き方』書籍情報