今回紹介するのは、HRインスティチュート著『この1冊ですべてわかる 人材マネジメントの基本』です。
少子高齢化、IT化、グローバル化など、世界は目まぐるしく変化し、複雑化してきています。
昔は常識であったことも、今では非常識と取られてしまうことも多々あります。
そういったなかで、組織での働き方も変化してきました。
年功序列が当たり前だった昭和の時代から、成果主義や非正規雇用者が増えてきた平成の時代を経てきました。そして、現在の令和時代では新型コロナの影響でさらに働き方が変化しようとしています。
そういった複雑に変化している世界において、自社に優秀な人材を確保しておくことはより重要な課題となっています。
この本はその重要な課題に対して、組織としてどのように人材を確保、活用していけばいいのか、組織人である個人はどのように行動していけばいいのか、そのヒントを教えてくれる一冊となっています。
なお、今回紹介する本は僕のお知り合いである大杉 潤さん(@alohakcc)を介して献本いただきました。大杉さん、HRインスティチュート様、どうもありがとうございます。
では、『人材マネジメントの基本』を紹介していきましょう!
目次
『人材マネジメントの基本』 〜 オススメしたい人
この本をオススメしたいのは、次のような人です。
- リーダーやマネージャーなど人材育成に関わる人
- 人材採用を担当する人事部などに所属する人
- 組織を経営している人
- これからの働き方について考えたい人
『人材マネジメントの基本』 〜 著者紹介
あらためて、今回紹介する本はこちらです。
この本の著者となっている「HRインスティチュート」は、1993年に設立された、経営支援・人材育成を専門とするコンサルティング会社です。この本では、この会社のコンサルタント6名の方々が中心となって執筆されています。
この本では、人材マネジメントの領域(特に、組織開発・人材育成)において活動されているコンサルタントやスタッフの方々が中心となって執筆されています。
リンク:HRインスティチュートホームページ人材マネジメントとは?
この本のタイトルにもなっている「人材マネジメント」とはどういったことなのでしょうか。
この本のなかでは次のように定義されています。
個人(社員やメンバー)が、所属する組織や社会のために、能力を最大限に引き出し、発揮することを支援する組織の関わり
現代社会は構造が複雑化してきており、これまでのように単に人材を集めて、育てて、組織に貢献してもらうというやり方だけではうまくいかなくなってきています。
そこには、これまでのような方法+現代社会に即した形での方法が必要となってきます。そして、それは組織経営全般にも関わってくることです。
この本で紹介されている「人材マネジメント」は、人材育成だけではなく、組織経営も含め人材を活かしていくための方法と言えるでしょう。
本の構成と内容
この本では、人材マネジメントに関わる内容を以下の7章の章立てで紹介しています。
序章 人材マネジメントの重要性が高まっている
第1章 人材マネジメントの目的と役割
第2章 時代の要請と人材マネジメント
第3章 「人材獲得」における人材マネジメント
第4章 「人材育成」における人材マネジメント
第5章 「人材の評価と組織運営」における人材マネジメント
第6章 社員が活躍しやすい組織をデザインする
第7章 持続して成長する組織をつくる人材マネジメント
全体の流れとしては、人材マネジメントの目的や役割から始まり、これまでの歴史、そして現代においてどういった形で人材をマネジメントしていくのかということが紹介されています。
最初から読み進めるのもいいですし、今、自分が関わっているところから読み始めるのもいいでしょう。
フリーランスの僕がこの本を読んで感じたこと
僕は今、フリーランスとして働いています。
だから、この本に書かれている「人材マネジメント」に関しては直接関係ないかもしれません。
ただ、僕も以前は一企業人でした。新人の人材育成に関わっていたこともあります。
また、フリーランスとして働いていても、どこかの組織に関わることはあるでしょう。
そういった意味で、この本を興味深く読まさせていただきました。
そのなかで僕が感じた3つのことを紹介します。
「ヒューマンリソース」から「ヒューマンリレーションシップ」へ
これまで当たり前のように運用されていた終身雇用制度。
この制度のもとでは、定年になるまでずっと同じ組織で働き続けられました。
そのため、昔はその組織に忠誠心を持って働いている人も多かったでしょう。
一方、成果がなくても同じ組織にいることができるため、モチベーションが低いまま働き続けるという人もいることも確かです。
しかし、現代において、その終身雇用制度は崩壊しつつあります。
組織も経営状況が以前よりも悪化して、これまでのように成果が上がらない人を雇える力がなくなってきているからです。
また、女性の社会進出やグローバル化による外国人労働者が増えたことなどより、これまで以上に優秀な人材を確保できるようになってきたので、わざわざ昔からいる人を雇っておく必要がなくなってきたのも一つの理由でしょう。
こういった雇用制度の変化において、人材マネジメントの軸に必要なこととして、この本では次のように紹介されています。
一言でいえば「ヒューマンリレーションシップ」を重視することです。つまり資源としての人という位置付けに加えて、一緒に目的を追い求め、目標を達成する「仲間」「パートナー」である、という関係性を重視した見方です。
「ヒューマンリソース」から「ヒューマンリレーションシップ」へ、という考え方が今後の人材マネジメントの軸として重要になります。
これまでの組織に属する社員やメンバーの働き方は、それぞれはある役割を持って働いているが、お互いの関係性はあまりない、「点」の働き方だったように感じます。
しかし現代は、それぞれの役割を持った上で、お互いが協力しあってより大きな目的を達成していく、「線」さらに「面」のような働き方になっていくように感じています。
そういう意味で、”「ヒューマンリソース」から「ヒューマンリレーションシップ」へ”という文章には非常に納得させられました。
そして、そのためにはお互いを仲間、パートナーとして扱っていけることが必要なんだと感じました。
「信頼」「感謝」「尊重」が重要なキーワード
お互いを仲間、パートナーとして扱っていくためには、お互いを信頼していることが重要です。
この本のなかでは次のように書かれています。
「人」は感情を持った生き物であり、その感情一つでモチベーションが異なり、そのモチベーションが成果をゼロにも100にも、1000にもするということです。こうした特徴をもつ、「人」という資源の力を最大限に引き出すには「信頼」することが欠かせません。
人は信頼されることで、その能力を存分に発揮できるものです。
僕もフリーランスとして働いていて、クライアント様から「信頼している」旨の言葉をいただくとモチベーションが上がってきます。
そして、さらに仕事に励むことになり、信頼関係がより強化されていくわけです。
人材マネジメントに限らず、これからは「信頼」というキーワードが重要になってくる時代ではないでしょうか。
クラウドファンディングでお金が集まるのも、その人や組織を信頼しているからでしょう。
一方、不祥事を起こした企業などが倒産に追い込まれていくのは、その企業が国民の信頼を失ってしまったからだと言えます。
さらに重要なのは「感謝」「尊重」です。
この本のなかでは次のように書かれています。
人材マネジメントの根底には「信頼」「感謝」「尊重」であり、それが職場の心理的安全性を高め、活力を生み出します。そして、その循環は企業のリーダーである経営者や、職場の長であるリーダーが担っているといっても過言ではありません。
人は感謝されると安心した幸せな気持ちになれるものです。感謝されることで、「これをやってよかったんだ」という安心した気持ちになれます。
安心した気持ちになることにより、その職場でさらに働きやすくなるものです。また、上司から感謝されたり、尊重されたりすると、モチベーションが上がってくるものです。
そういった意味で、リーダーや上司が自ら率先して「感謝」や「尊重」の言葉を伝えることが大事になってくるということですね。
ただ、「感謝」の言葉はどういった関係性であってもお互い伝えあえるもの。
だから、お互いが感謝しあえる組織作りも重要になってくるでしょう。
人材マネジメントにおいて、人と人との関わりあいがより重要になってくる時代
この本全体を通して感じたことは、これからの人材マネジメントにおいて「人と人との関わりあいがより重要になってくるだろう」ということです。
SNSを見ていてもそうですが、共感できる人にはフォロワーがつきやすいものです。(アンチフォロワーもいますが……)
これからの時代、共感されやすい人や組織に人がたくさん集まっていくだろうと感じています。
そういった意味で、組織内の仕組み作りだけではなく、人材を集める意味でもたくさんの人に共感してもらえるような組織作りも必要になってくるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、HRインスティチュート著『この1冊ですべてわかる 人材マネジメントの基本』を紹介してきました。
「人材獲得」から、「人材育成」、「人材の評価と組織運営」における項目まで人材マネジメントに関する考え方や方法について紹介されています。
また、社員が活躍しやすい組織作りや、持続して成長する組織作りについても書かれています。
この本は、主にマネージャーやリーダー、社長、経営者、人事担当者向けの本です。
ただ、多様化する組織において働きやすい環境を作っていくためには、人材マネジメントに直接関わる人だけではなく、そこで働く社員やスタッフ一人ひとりにも人材マネジメントの考え方が必要ではないでしょうか。
そういう意味で、人材マネジメントに関わる人だけではなく、組織で働いている方々に一度は読んでおいてほしい一冊です。
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